2018.11.10-11
教育講演では中村かおる先生の色覚検査と対応の実際を聴きました。
学校での色覚検査が再開され、眼科一般診療の場でも色覚検査が急に増えた。
先天色覚異常は程度にもよるが常に色を誤認するわけではなく、条件により変わる。
面積が小さい、低明度、低彩度である、周囲が暗い、提示時間が短い、物体色より光源色 等の方がより誤認しやすい。
正常色覚の感覚に置き換えることは難しく、本人の自覚も乏しいが、注意深く見た時は誤りにくく、また学習により間違いにくくなるので、本人が色覚異常を理解し、どの色を間違いやすいかなどをわかっていると日常生活に大きな支障が生じることはない。
色彩感覚以外は異常はないので、色以外での判別の仕方を見つけ、わかりにくい時は周りの人に尋ね助けてもらえるようになっておくことも大切である。
学校で過度に配慮されると社会に出てから困ることが多くなるので、把握してもらうことは大事だが、過敏になりすぎてはいけない。
色覚異常の補正眼鏡は特定の色を見分けやすくはするが、特定の色以外は逆に見にくくなるので実用性には乏しい。
一般外来での検査では石原表をまず行う。
石原表は2013年にでたⅡでは環状表があり、正常者、異常者共にどの方向かに切れ目があり答えることができるので、数字が読めない、他者と違うというストレスがなく、また年少者にも検査しやすくなっている。
曲線表は初版作成時の文字を読めない大人のためのもので、逆に年少児には境界線が不鮮明であるため判別しづらく、向かない。使用しなくてよい。
38表中、曲線表を除く22表を検査し、先ず後ろの環状表から、そして次に数字表の順番で、22表中の誤読数を計算。誤読4表以下は正常。5~7は異常疑い。8以上で色覚異常と判定する。
幼児では色覚が未発達であったり、環境条件などが結果に影響し、応答が不安定で判断に迷う症例も多い。
判定に迷うときは1年でなく2~3年あけてから再検すると良い。
女子が読めないときは、先天色覚異常(0.2%)誤読かなり多い。保因者(10%)誤読はないか少ない。
又は心因性。
石原表で異常と判定したら、パネルD-15で程度判定を行う。パネルD-15は1回目で明らかに判定できれば2回測定する必要はない。
異常か正常か怪しい時は無理に判断せず疑いとすればよいのがわかって少し気が楽になった。
ゲームやスマホによる急性内斜視は反則空間無視のように視空間無視(失認)の状態。近業に順応しすぎた結果、遠方視が不要となり適切な開散運動が欠如、脳が遠圏を無視(ネグレクト)してしまう。遠見複視は-。
近見反応測定装置「両眼波面センサー」では輻湊・調節・縮瞳の近見三反応を同時に見ることができる。
両眼それぞれに1台ずつ波面センサーと全眼部カメラが搭載され、屈折度、高次収差、視線方向、瞳孔径を両眼同時に測定可能である。
商品化はされていない。
健常者に測定を行うと、視標の距離の変化に伴ってまず輻湊反応が生じその後調節反応、瞳孔反応の順で反応することをとらえることができた。
内斜視は眼位だけでなく、調節、瞳孔の反応も悪い。
間歇性外斜視の手術前は輻湊はなんとかできているが屈折は常に近視寄りで調節リードが起こっているが、手術後、調節、瞳孔反応とも正常に近くなる。
輻湊不全は調節もうまく機能していない。プリズム治療により調節も正常に近くなる。
眼位の異常による眼精疲労は輻湊の問題だと思っていたが、三反応のが連動し合っていることがデータにより良くわかった。製品化されていないのが残念である。
視力正常で視覚異常を訴える黄斑上膜症例。
歪みがなく、矯正視力正常なERM症例でも低照度になると視力が低下しやすい症例があり、視力表の輝度、室内の照度には注意を必要とする。
変視症と低照度視力の低下は違った機序で起こる。
メガネレンズのJIS規格の改正(2018.10.1~)
改正前
視感透過率8%以下のレンズ 運転における使用禁止
視感透過率75%未満のレンズ 薄暮または夜間運転時の使用禁止
改正後
視感透過率8%以下のレンズ 運転用または路上での使用禁止
視感透過率75%未満のレンズ 薄暮または夜間における運転用または路上での使用禁止
上記の規定により、運転者だけでなく、路上歩行のおけるすべての眼鏡レンズ装用者が対象となった。
医療目的に処方された特定の透過率または吸収率の特性を持つレンズは適応外となる。