第18回 抗加齢医学会 2018/8/1 松坂

<ω3脂肪酸>

卵アレルギーのマウスに亜麻仁油を投与すると下痢をしない。これは、亜麻仁油に多く含まれるα―リノレン酸を摂取すると、体の中でEPAに変換され、更にエポキシETEという代謝物に変換され、このEpETEに食物アレルギーを抑制する活性があるからだとのことだ。また、EpETEは接触皮膚炎も抑制できることがわかった。ステロイドはT細胞を抑制することで炎症を抑制するが、EpETEは好中球の炎症部位への浸潤を抑制することで炎症を抑えることがわかり、それぞれ作用点が異なる。このことから、副作用を心配せず皮膚炎を治療できるものとして今後期待される、とのことだった。

 

<糖尿病網膜症に対する新しい治療>

眼局所には組織レニン・アンギオテンシン系(組織RAS)が存在し、その下流においてVEGFや炎症性サイトカインなどの発現亢進による炎症機序を介して網脈絡膜病態が形成されるが、組織RASの上流に位置するプロレニン受容体が糖尿病網膜症患者の増殖膜や硝子体中に多く存在することがわかり、プロレニン受容体をターゲットにした治療薬の研究がされているとのことだった。VEGFの発現は晩期に起こるので、その上流のプロレニン受容体をターゲットにすることで更に早い段階での治療が可能となる可能性がある。

 

<網膜症患者の眼科受診の必要性>

なぜDMで失明するのか?というタイトルのシンポジウムでの慶應の内分泌内科Dr.の講演で、DM患者で眼科を受診したことがない、もしくは一年以内に受診していない患者はDM患者の約61%とのことで、かなり受診率は低いとの報告があった。眼科受診の目的は網膜症の早期発見は勿論だが、神経障害や腎症の発症との相関性があるかも内科Dr.は診ているとのことだった。足底に潰瘍ができた場合や腎機能低下を認めた場合に、DMの合併症だという先入観を持ちがちだが、糖尿病網膜症がなければ別の疾患を考える必要がある。

DM患者の眼科受診率を上げるよう、更なる啓蒙活動が必要である。

 

<ToxicAGEs(TAGE)>

高血糖状態が続くと促進的に生産される蛋白質代謝産物(AGE)の中のToxicAGEsと呼ばれるものがDMや糖尿血管合併症の発現、進行に強く関わっていることがわかっているが、TAGEの生成、蓄積が心血管疾患、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、肝がん、大腸がん、不妊などにも関わっていることがわかった。健診で正常であっても血中TAGEレベルが高ければ生活習得病の発症を予測できるとのことだった。。

 

<ドライアイ>

エイジングにより涙が減ることがわかっており、アンチエイジングアプローチによってドライアイを治療するという新しい方法を研究していると慶應の坪田先生が報告されていた。実際にメタボの人は涙液量が少なく、睡眠不足、運動不足、ストレスによって涙液が減ることがわかったとのことで、生活習慣の改善がドライアイ治療にも有効ではないかと考えられるとのことだ。腹式呼吸により涙液量が増えるそうで、4秒吸って6秒吐くという腹式呼吸を18回(3分間)行うと10分後に涙液量が増えるという実験結果があるとのことだった。

ドライアイの診断基準が改定され自覚症状が重要視されているが、他覚的所見が無いのに自覚症状が強い患者が増えているとのことだった。元々はドライアイによる症状だったが、炎症が慢性化して所見がなくなっても慢性疼痛として痛みが残ってしまうそうで、神経痛の内服薬のリリカを処方して痛みが無くなくなるケースを多く経験しておられるとのことだった。

 

<エピゲノム解析>

ゲノム解析でAMDのリスクが高いとしてもその全ての人が発症するとは限らず、発症するかどうかはエピゲノムにより決まるとのことで、エピゲノム解析が注目されているとのことだった。発症するかしないかには環境が大きく影響するので、AMD患者へのサプリメントの摂取や禁煙などの生活習慣の改善に対する指導の重要性を改めて感じた。