視能矯正学会報告 大嶋

アトロピン硫酸塩の副作用の発症率とシクロペントラート塩酸塩との屈折差の比較

アトロピンの濃度は5歳未満0.5% 5歳以上1.0% を使用する。

1日3回 5日間 又は 1日2回 7日間 点眼

保護者への説明

アトロピン検査が必要な理由

点眼方法 両眼に1滴ずつ点眼すること、副作用防止のため1~2分間涙嚢部圧迫。

点眼の効果で羞明、近見障害がでる。

発熱、顔面紅潮などの副作用と思われる症状がでたら点眼を中止し、そのほかにも以上あれば病院に連絡する。

本人以外が使用しない。保護者が責任を持ち保管する、使用後は破棄すること。

副作用 83例中3例 (3.6%)顔面紅潮や発熱だったが、いずれもすぐ治まり点眼続行できた。

3例中1例は1年後に再度アトロピン検査をしていたが問題なく施行できた。

シクロペントラートとの屈折差は平均すると0.5~1.0D程度であるが、サイプレ点眼で処方した眼鏡で視力の向上が見られず、アトロピン検査を施行し、+2.0程度の度数差が出た症例もあった。遠視度数を強めたことで視力の向上が得られた例もあり、点眼には手間もかかるが、副作用も少なく調節麻痺効果の大きいアトロピン検査は内斜視や屈折異常弱視には積極的に提案すべきである。また、調節麻痺効果が残ってるうちに処方眼鏡を装用することは健眼の視力が良好な不同視弱視には有用である。

 

大きな中心暗点の症例に対するロービジョン訓練の試み

大きな中心暗転のあるロービジョン患者にとって周辺に残された視野の活用は非常に難しいが有効視野の理解と偏心視獲得のための眼球運動訓練を指導し、家庭訓練を行うことで、訓練前右眼耳側のみ用いて見ていたが、左眼の耳側も用いて見ることができるようになり、固視交代により拡大読書器を用いての読み効率が良くなった。

患者自身の意識の有無にかかわらず、自然に偏心視を獲得することもあるが、中心部が見にくい患者に対し医療関係者が早い時期に偏心視の評価及び指導をすること、 患者本人が病態を理解し高いモチベーションで訓練することで、安定した偏心固視を獲得し、視機能の活用範囲を広げることで患者のQOLが上がる。

ORTeで日常視に近い状態で遠見立体視の定量ができる。また、TSTでの近見立体視の結果とも相関がみられる。

 

アトロピン検査は行っていないが、サイプレジンだと調節麻痺効果が不完全な場合があること、弱視治療の際、視力の向上が見られない際はアトロピン検討、遠視のUPも考慮したい。

黄斑部疾患の患者さんの視野状態の把握も大事だと思った。中心暗点がある患者さんへのケアを外来でももう少しできればと思う。

ORTeはまだまだ活用の幅があると思いました。遠見立体視が測れるようスペースの工夫をしたいです。