日本弱視斜視学会・日本小児眼科学会2016に参加して(大嶋)

近視と斜視 近県内斜視は学童期の近視を進行させるのか?(長谷部 聡先生)

近見内斜位は近視学童の約30%に見られるが、近見内斜位では近見時に起こる融像性開散が輻湊性調節を介して調節反応を低下させる。増大した網膜後方へのデフォーカス(調節ラグ)は眼軸長の視覚制御機転を刺激して眼軸長の過伸展と近視進行を促す。

外斜位群よりも内斜位群の方が近視進行速度が速い傾向がみられて、これには累進屈折眼鏡の装用が有用で近視抑制効果も外斜位群で半年で0.08Dの抑制に対し内斜位群の方が0.30Dと有意に高い結果となった。累進レンズ装用での治療開始時期が早い程抑止効果が高いそうです。

子供は近用部を使わなくとも近方視が可能なためできるだけ累進帯長は短い方がよく、10、11mmが良い。使用方法の説明もきちんと行って装用してもらうことが大事である。

学校健診でもしばしば近見内斜位見かける。潜伏遠視があるのでは?と言われていたが、あまり遠視の影響という感じではないのにと思っていたが、今回の話の方があてはまるように思いました。

日本と欧米との違いもあるのかもしれません。

 

小児の緑内障診療(木内 良明先生)

i-cereが良く使われるようになってきた。誤差が少なく、i-cereプロは使いにくいが仰臥位でも測定できる。ゴールドマンより高めに出る。

エビデンスはないが角膜混濁のある人は混濁を避けて、LASIKも角膜厚の正常な周辺部で測定したら、本来の値に近い数値が出るかもと話があった。脈派まで測れるニューマトノグラフが一番正確との話も上がったが、DCTの話は出なかった。

 

ERG(近藤 峰生先生)

錐体ジストロフィー OCTにてIS/OSライン不明瞭、ERGも異常、スタルガルト病の初期は視力異常なく、ERG異常なしでOCTで中心網膜厚薄くとOCTにて異常が発見できるというものが多いが、先天停在性夜盲などはOCTはほぼ正常でERGでしかわからないこともある。弱視治療をしていても5~6歳過ぎても視力が出ないときはOCTだけでなくERGが必要。

 

間歇性外斜視の術前後における視能訓練(松本 富美子先生)

間歇性外斜視の外斜位時の生理的複視に抑制があるもの50%~70%。

術前の外斜視時の抑制除去訓練(flashing method)はもちろん必要だが、術後の生理的複視認知訓練、輻湊訓練、融像訓練を行うことでその後の斜位維持率が違ってくる。生理的複視認知訓練が重要である。

近大では術前2Wにわたって3~5回。術後は眼位が安定する1か月後から8Wにわたって週1回ペースで訓練を行っている。

 

イブニングセミナー JFCのオクルパッド

不同視弱視の弱視治療にオクルパッドが有用である。

オルテのタブレットタイプで偏光眼鏡を装用して弱視眼だけに映像が見えるようにして簡単なゲームをすることで訓練する。

片眼遮蔽の場合導入時1日3時間が平均で効果がないと6時間の指示を出すこともあるが、オクルパッドは1日1時間でよい。また実際の使用時間も記録されるため訓練の管理が容易にできる。

子供は従来の弱視訓練と異なり、楽しんで取り組んでくれ、1時間超えてしてしまう子も多い。

継続させる苦労でなく、やめさせるにあたり苦労があるとの報告もあった。

訓練開始6カ月後のドロップアウト率は片眼遮閉は80%(←悪すぎる。アドヒアランスが悪いせいとの指摘もあり)に対しオクルパッドは25%と格段に良い。

弱視眼の1.0到達期間も片眼遮蔽平均18か月に対しオクルパッドは7か月と早い。

オクルパッドを使っての遠見視力検査での詐病の検出や、オルテでの通院訓練との併用例なども紹介されていました。

オクルパットが良いというわけでなく、しっかり集中して見ることができれば3時間も6時間も無駄にすることは必要なくて、1時間より短い時間でも効果があるのかもしれないと思いました。

また、オルテの活用の幅は広く、もっと使いこなせるよう熟知しないとと思いました。

 

モーニングセミナー 斜視・弱視のフォローアップ

屈折異常弱視(特に不同視弱視)は視力が出た後も4人に1人は弱視を再発する。10歳以上は比較的再発しにくくなる。メガネは必ず装用の上、3Mおきのフォローが必要である。中学になったら1Yおきで中3までフォロー。それ以降は自覚的に変化があったらの来院でよい。弱視用のメガネの給付は矯正視力が1.0に達していても、「今中止すると弱視の再発の可能性が高い」とのコメントを指示書に記載により支給が可能となる。

XPTはphoriaが維持できていれば6M毎。

内斜視のptにはアトロピン麻痺下での完全屈折矯正が必須。

先天白内障の30%に続発性緑内障が起こるので定期検査は必要。後発白内障も強く水晶体上皮の増殖が強い場合はopeになる場合もある。

網膜芽細胞腫の再発は10数年後でもあり得るので定期検査が大事である。

白血病の再発も目からくることが多いので眼科的フォローが重要である。

 

調節麻痺薬の使用に関する施設基準及び副作用に関する調査(若山 暁美先生)

116施設での調査。

全施設で調節麻痺薬を使用していた。

アトロピン使用は86.2%、シクロペントラートは96.6%であった。

点眼法はアトロピン1日2回7日間。使用濃度は0.1%のみ。または1%と0.5%の使い分けをしている施設とあった。1歳以上は0.5%、3~5歳以上は1%としている。0.5%を使いたいが希釈しないといけないので仕方なく1%を使っているとの意見もあった。

シクロペントラートは5分間隔で2回点眼の上60分から65分おく施設が多かった。

両方使っている施設では、内斜視の有無で薬剤を決定している。

副作用はアトロピンは使用施設で84.5%、シクロペントレートは55.2%が経験していた。

アトロピンの副作用としては顔面紅潮、発熱が主。シクロペントラートは眠気、熱感が58%、幻覚が28%となった。

調節麻痺薬の使用のスタンダードがはっきり示された発表でした。

内斜視がある場合はアトロピンを使用しないのであれば、サイプレでの深追いをせず、アトロピンでの検査ができる施設への紹介が良いのかと思いました。

 

Sagging Eye Syndrome 診断と治療 (後関 利明先生)

高齢者の複視の訴えの中で、原因のハッキリしない上下斜視や内斜視を滑車神経麻痺や開散麻痺?と診断していたが、その多くがPulleyの異常で起こることがMRI画像などでわかってきた。

外直筋pulleyは加齢により菲薄化し重力の影響で下方に偏位する。外直筋pulleyの下方偏位が左右同程度だと開散麻痺様の内斜視を、左右眼で差があると上下回旋斜視を呈する。

水平直筋pulleyの下方偏位で上転障害が起こる。

外直筋pulleyの下方偏位LR-SRバンドの延長破たんで起こる疾患をSagging Eye Syndromeという。

Sagging Eye Syndromeについては良くわからなかったのですが、高齢者の原因の明確でない微量の上下斜視、開散麻痺様の内斜視は外来で良く遭遇するが、筋力の低下だけでない加齢変化があるということがわかりました。

今回話を聞いた中でまだまだ分からないことがたくさんあると感じたので、不明瞭な点は今後、勉強し直したいと思います。

 

大嶋 有貴子